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マクドナルド不買運動は起こるのか

マクドナルドが「名ばかり管理職」に常識はずれのサービス残業をさせていたことは、皆さんもご存知のことだと思いますが、この問題に対する解決策が非常にまずいですね。
顧問弁護士や社会保険労務士のリーガルオピニオンを複数取って、IRの専門家に相談して、発表しているはずですが、明らかに失敗しました。

ある経営者が私に帝王学を教える時に、よく仰った言葉に「渦に入ると渦が見えない。」というものがあります。
この言葉の意味の深さを私は、その後思い知らされることになるのですが、まさに、今回のマクドナルドの発表は、「渦に入ると渦が見えない。」という状態の典型です。

保守的な判決を出す東京地裁が、マクドナルド敗訴の判決を出したので、顧問弁護士は、東京高裁の判決もかなり危ないと思っているはずです。
エリートばかりいる東京高裁で負けたら、最高裁での逆転はほぼ不可能と言ってもいいですから、次が事実上の勝負です。

さて、そこで、この時点で改善の意思を示すべきという経営判断をしたのでしょうが、その内容が悪すぎます。
とにかく、形式的に合法にしようという意図が丸見えで、意地悪な見方をすると法の潜脱を一生懸命考えて、発表しましたねと見られてしまいます。

しかし、大企業の経営実務の経験がない、法律家にこんな風にしてくれと無理なことを要求したのでしょうから、確かに限界があります。
これは、ある意味法律家の責任ではありません。

問題は、IRのスタッフは何を考えているのかという点です。
株主総会で突っ込まれそうなことを想定して、それに対する策ばかり弄しています。
想定される質問に対して、事前に答えておいて、突っ込まれないようにしているということが丸見えです。
考えが浅すぎます。
これだけ、社会問題になれば、発表の対象は、株主ばかりではありません。
会社の信頼回復なのですから、発表の対象は、マクドナルドを利用して下さっている消費者です。
また、サービス残業をやらせますよと告白しているような会社に、優秀な人材が集まりますか。

このサービス残業の問題は、今後もつっつかれますから、根本的な改善をしなければ、後々ボディーブローのように効いてくるでしょう。
最悪のシナリオは、どこかで過去の莫大な額のサービス残業代を払わされた上に、改善による今後のコスト負担により、マクドナルドの一番「ウリ」である、価格競争力がなくなることです。

確かに、目先のIRとしては、収益が悪化しませんというメッセージを株主に送りたいのでしょうし、裁判が確定していないのですから、自らの非を認めることが出来ないのでしょうが、経営戦略が間違っています。
リスクマネジメントを考えていません。
これで、東京高裁で負けたら、最悪のシナリオ通りになります。
経営陣は、退陣だけで済めばいいですが、東京地裁の判決が出た後での経営判断ですから、株主訴訟の対象にされる可能性が高いでしょうね。
日本の上場企業の経営者は、給料が安い割りにリスクだけがその何十倍も高いので、大変です。
まあ、マクドナルドあたりは、株主訴訟に対する保険に入っているでしょうけど、事実上利益を削って、株主訴訟に備えるというのも変な話ですね。

今回の件は、東京地裁で負けた時点で、和解をして、問題点を徹底的に洗い出して、根本的な改善策を構築した上で、発表をして、収益悪化については、長期的な視点で、株主のご理解を得るしかなかったと私は思っています。

さて、何を血迷ったのかマクドナルドが最悪の経営判断をしてしまったと思っていますが、具体的に今後何が起こるかが容易に想像出来ます。

先日、セイコーエプソンでの過度の海外出張と死亡の因果関係が東京高裁で認められていましたが、当然この問題が、マクドナルドでもクローズアップされてくるでしょう。

新しい制度が採用されれば、会社に申告しない(人事評価にかかわるので、事実上申告できない)サービス残業に形を変え、しかも現在の経済状況に鑑みれば、更なるコストの増加が予想されるので、その残業時間自体ももっと増えるでしょう。

そうなると、過労死、鬱病による自殺等が必ずどこかで出てくるでしょう。
既に、マスコミは、隠れサービス残業が増えることを予想していますので、このような問題が起きたら、袋叩きになります。

収益の問題だけを考えて、株主用の発表をするから、このような状況が予想されるのです。
100円マックも良いですが、それが人の命と引き換えに行われていると報道されたらどうするつもりなのでしょうか。

非常に経営センスが悪いです。
矛盾した困難な問題を抱えていることは、十分理解しています。
しかし、経営判断は、結局プライオリティの問題です。

人の命と企業の信頼という最もプライオリティが高い二つの要素を無視した経営判断は、やはり経営センスが驚くほど悪いとしか言いようがありません。

いろいろとマクドナルドの悪口を書いていますが、その苦しい胸のうちは分かっているつもりです。

とにかく、マクドナルドの競争力というのは、日本におけるハンバーガーのパイオニアである知名度とスケールメリットによる価格競争力にあります。

その価格競争力もあらゆるコスト削減によりなされているはずですが、やはり現時点では、かなり無理をしているでしょう。

食材そのものの原価のアップもありますが、苦しいのは物流コストと容器などのコストです。
容器のコストは、大量に購入することにより、びっくりするくらい安く抑えているはずですが、原油高で、取引業者も限界になっているでしょう。
100円マックの実現には、取引業者の痛々しいほどの努力があるのでしょうが、アメリカではガソリン代が1年で倍以上になっているような経済状況ではもう無理があるでしょう。
物流もしかりです。

要するに、元々店長のサービス残業により、これらのコストを吸収してきたのですが、今回このような労働問題が、一番苦しい時期に噴出してしまい、にっちもさっちもいかないというのが現状でしょう。

そうなると、仕事のブログでは、前から書かせて頂いていますが、ジャスダックに上場したという経営判断が痛いですね。
要するに今回のようなでたらめなIRをしなければならなかった元凶は、上場していることにあるのです。
もちろん、上場を維持するためのコストも莫大なものがありますが、それ以上にまずいのは、IRを意識しすぎて、経営判断を根本的に誤ったことです。
損失として換算すると、恐らく、上場による資金調達のメリットなど吹き飛んでしまうと思います。
いずれにしても、このような労働実態があるにも関らず、上場審査をパスさせた、主幹事証券とジャスダックの判断の甘さもひどいものです。
ジャスダックとしては、どうしても、市場の目玉として、マクドナルドが欲しかったのでしょうが、結局、無理して、自分のところにもってくるとこのようなことになるのです。
労働実態に目をつむるという取引がジャスダックとマクドナルドの間にあったのでしょうね。
審査で一番突っ込むはずのところを、簡単にパスさせているのですから。

マクドナルドの経費削減は、とりあえず、広告宣伝費の劇的な削減と上場廃止でおこなうというのが正しい経営判断だと私は思います。
そのかわり、労働問題の根深い闇の部分はこの際、一掃するのです。
中期経営計画も作り直して、一時的には、赤字にならない程度に利益を下げて、建て直しにコストをかけるべきです。
そのためには、どうしても上場廃止しなければなりません。
マクドナルドほどの知名度があれば、広告宣伝費の劇的な削減と上場廃止で、何とかしのげるだけの体力があるはずです。
大義名分もあります。
きちんとした経営ビジョンを示せば、銀行も協力するでしょう。

いずれにしても、これだけ大きな企業になりますと、いかなる経営判断も効果が出るまでに時間がかかりますので、すぐに決断をしなければなりません。
上場廃止など、判断してから実現するまでかなりの時間がかかりますし、宣伝広告費も年間契約をしているものが多くあるはずです。

そして、一番心配しなければならないことは、人材確保です。
フジテレビ系の「めざましテレビ」でも特集をやっていましたが、最近の新卒採用者の3年以内の離職率は、3割とのことです。
年間の育成コストが2000万円。当然、企業の利益を圧迫します。

超人気企業である三井物産ですら、人材確保に頭を悩ましているわけですから、今後のマクドナルドの人材確保が更に難しくなることは容易に想像できます。

元々、マクドナルドの仕事は、労働集約型産業なので、あまり人気がない業界であるのに、正社員として入社するとすぐに店長にさせられて、正に死ぬほどサービス残業させられるとなれば、喜んで入社する新卒はほとんどいないでしょう。

他の希望企業に入社できなかった人が、嫌々滑り止めとして入社して、上場企業とは思えないような過酷な労働条件を知ったら、多くの方は、すぐに辞めるでしょう。
IR対策もけっこうですが、結局企業経営は、人の問題に尽きるので、自ら人材確保が出来なくなるような発表をされたのは、最悪の経営判断です。

最低限、上場企業として恥ずかしくないレベルに労働条件を引き上げて、更に、魅力ある企業であることを人材市場にアピールしなければなりません。
コストをかけるところが、あまりにも的外れです。

ところで、東京地裁での判決が出た時から、一部で不買運動が起こっているようです。
労組が主導してやっておられるのでしょうが、残念ながらあまり話題になっていません。

確かに、商品が安い料金設定ですので、サービス残業などには無関心な方は、結局安けりゃ使うということなのかもしれません。

しかし、企業イメージはどうするつもりでしょうか。
船場吉兆ほどではありませんが、マクドナルドは今回、完全にリスクマネジメントを間違えたと思います。
船場吉兆の問題も一段落しましたので、マスコミは、マクドナルドの不祥事をかぎまわっていると思います。
アルバイトの数が半端ではないので、情報が入手しやすいです。したがって、何かあれば、一気に不祥事として、問題が噴出するでしょう。

今回の問題だけでは、まだ不買運動までは至らないと思いますが、船場吉兆のように今後の対応を間違えたままでいると、必ず、いつかは大問題が起こると思います。

※本業の経営コンサルティングでの仕事で、飲食店の経営コンサルティングを承ることが多くなりました。
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なお、あくまでも経営コンサルティングですので、料理の評価のみをして下さいというご依頼には対応させて頂いておりませんので、ご了承下さい。
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とんしの「本当に美味いもん屋」 ※08’5.21更新

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by direct3935 | 2008-05-30 08:52 | グルメ  

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