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天ぷら その一

私が書くと何でもそうなってしまいますが、天ぷらは本当に難しい食べ物です。
私は、天ぷらという食べ物の存在にずっと長い間疑問を持っていました。
それは、高級な食材を生で頂いたり、他の料理で頂いたりするよりも、天ぷらにすることにより美味しくすることができるのかという疑問です。

食べ歩きが本格化してきた頃になっても、なかなか納得できる料理に出会うことが出来なかったのは天ぷらととんかつでした。
高級店で頂いても、素材の旨味を最大限に引き出しているとは到底思えなかったのです。油っぽくなっている分だけ美味しくないとさえ思いました。
そして、つゆをべっとりつけるとつゆの味しかしません。
料理として存在する意味があるのかとよく考えていました。

魚介類を家庭で天ぷらにすると確かに美味しいですよね。
でも、あれは、衣とつゆの混ざった味を楽しんでいるだけです。スーパーで購入する素材のレベルでは、素材そのものにあまり旨味がありません。
もちろん、魚介類も熱が通れば、旨味が出ますが、家庭料理のレベルでは、一番旨味が出るように揚げているか疑問です。

さらに不思議なのは、野菜の天ぷらです。私は通常の野菜の天ぷらを頂いて美味しいと思ったことはほとんどありません。
超一流の方が素晴らしい素材を使って揚げれば美味しい野菜の天ぷらもあるかもしれませんが、基本的に野菜の天ぷらは邪道だと思っています。生臭さや雑味のある魚介類と違って、野菜を天ぷらにするメリットがあるとはあまり思えないからです。
野菜の天ぷらが美味しいという評判の有名な天ぷら屋さんが銀座にありますが、私は何がどう美味しいのかさっぱりわかりませんでした。だから味音痴と言われるのかな。

しかし、茅場町「みかわ」に伺って、私のそんな心配も杞憂に終わりました。早乙女さんが揚げてくれた天ぷらを頂いて、私の考えが間違っていたとはっきりわかりました。
魚介類を天ぷらにすると、生臭さ、雑味がすべて抜けて、旨味だけが素材に残るのです。これは死ぬほど美味しいですね。
但し、そのタイミングは神技に近いようです。温度、湿度、素材などいろいろな条件を考えて、その日の揚げ具合が決まるというのですから、優秀な料理人でもほとんど真似することはできないでしょう。
実際に、早乙女さんが揚げてくれた天ぷらよりも美味しい天ぷらを私は今まで一度も食べたことがありません。「てんぷら深町」「楽亭」「よこ田」は大好きな天ぷら屋さんですが、どうしても早乙女さんとは差を感じてしまいます。彼の天ぷらはこの世のものではないのです。特に海老の天ぷらは恐ろしさすら感じます。

日本橋三越の近くにある超高級天ぷら店は、接客も良くありませんが、この素材の良さを引き出すということが一番できていないお店です。
天ぷらの素材として、このお店以上のものを使っているお店は私の知る限りありません。銀座の鮨屋も懐石料理屋もびっくりの素材を使われています。
しかし、私の好きな天ぷら屋さんよりも明らかに美味しくないのです。素材が素材ですから、それなりに美味しいのですが、料金に見合った味ではありません。そして、一番問題なのは、ご主人の腕が素材についていっていないことです。

鮨はそれなりのタネを使って、美味しい握りにするからこそ価値があると仰る方が、タネのレベルについていけない天ぷらを召し上がって美味しいと仰います。私は不思議でたまりません。
素材についていけない握りと天ぷら。素材の風味を損なわない分だけ、まだ握りの方がましだと思いますが・・・。

http://www.rak1.jp/one/user/11099447/

by direct3935 | 2006-03-27 17:46 | グルメ  

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